ロンドン出身の国際的な視点を持つ写真家
オリヴィア・アーサー(Olivia Arthur)は、1980年にロンドンで生まれ、オックスフォード大学で数学を学んだ後、ロンドン・カレッジ・オブ・プリンティングでフォトジャーナリズムを学びました。2003年にデリーに移り、写真家としてのキャリアをスタートさせ、2年半インドに滞在しました。その後、イタリアのFabricaで1年間のレジデンシーを経験し、文化的な分断に焦点を当てた作品を制作しました。2013年には、国際的に名高い写真集団「マグナム・フォト」(Magnum Photos)のメンバーに選ばれ、2020年にはその会長に就任しました。彼女の作品は、文化や身体、テクノロジーとの関係を探求し、視覚芸術のさまざまな媒体で表現されています。
異文化理解と人間の身体性を探求する作品群
オリヴィア・アーサーの代表作には、サウジアラビアの若い女性たちの生活を描いた『Jeddah Diary』(2012年)や、ドバイの船舶事故をテーマにした『Stranger』(2015年)があります。『Stranger』は、透明な紙に印刷された写真を使い、都市の表面的な繁栄とその裏にある脆さを浮き彫りにしています。また、彼女は大判ポートレートを用いて、人間の身体性やテクノロジーとの関係を探るプロジェクトを多数手掛けており、その一環として2020年にTEDトークを行いました。彼女の作品は、英国、米国、ドイツ、スイスの各地で展示され、各国の主要なコレクションに収蔵されています。
写真と他のメディアの融合
アーサーは、写真に留まらず、映画やコラージュ、児童書など、さまざまなメディアを通じて表現を追求しています。短編映画では、サンティアゴ巡礼の道を歩く囚人の物語を描き、また、自殺をテーマにした児童書も制作しています。さらに、ファッション写真家カドゥリ・エリシャー(Kaduri Elyashar)や、トランス女性をテーマにした作品でフィリップ・エベリング(Philipp Ebeling)とのコラボレーションを行っています。彼女は、写真の新たな可能性を探求し続け、常にその視点を広げています。
おすすめの写真集
Stranger
- 特徴:『Stranger』の魅力とユニークさ
オリヴィア・アーサー(Olivia Arthur)は、彼女の新作『Stranger』で、1961年にドバイ沖で沈没した船の生存者が現代のドバイに戻ってきたらどうなるかを想像し、視覚的に探求しています。この作品は、透明な紙に印刷された写真が層を成し、時間と記憶が曖昧に交差する感覚を再現します。これにより、ドバイの壮大さと同時に、現代の都市生活が持つ孤独や混乱の感覚を深く考察します。 - 見どころ:歴史と現代が交錯するドバイの物語
『Stranger』は、ドバイの劇的な成長と、それに伴う人々の疎外感を描いた作品です。船の沈没事故を軸に、過去と現在が交錯するこの作品は、ドバイの表面的な繁栄とその裏に潜む脆さを思い起こさせます。写真が透明な紙に印刷され、重なり合うことで、記憶や時間の曖昧さを強調し、視覚的にも内容的にも深い印象を与えます。
マグナム・フォトとFishbarの活動
オリヴィア・アーサーは、写真家としての活動だけでなく、ロンドンの写真出版スペース「Fishbar」の共同創設者としても知られています。このスペースは、写真家の作品を展示し、出版活動を支援する場として、彼女のビジョンを広める重要な役割を果たしています。また、彼女は2020年にマグナム・フォトの会長に選ばれ、その影響力をさらに拡大しました。彼女の活動は、写真の世界における新たな潮流を生み出し、多くの写真家やクリエイターに影響を与え続けています。