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写真に帰れ: 伊奈信男と近代写真の誕生

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愛媛の息子から美術史へ

愛媛県松山市出身の伊奈信男(いな のぶお、1898-1798)は、東京帝国大学で美学美術史を専攻後、美術史研究室の副手を務めました。初期ルネサンスを中心に研究しながら、西洋の近代美術に興味を持ち、やがて写真評論の道を歩み始めます。

写真論の開拓者としての伊奈信男と野島康三

1932年、伊奈信男は写真雑誌『光画』の創刊号に「写真に帰れ」という画期的な論文を寄稿しました。この論文では、写真本来の「機械性」を重視し、従来の絵画的な「芸術写真」からの脱却と、写真独自の表現方法の確立を提唱しました。この新しい写真美学の提案は、日本の近代写真論の始まりとみなされています。

伊奈信男のこの論文が掲載された『光画』雑誌は、野島康三が出資者となって創刊されました。野島は、伊奈の写真に関する革新的なアイデアとビジョンを支持し、『光画』を通じて新しい写真文化の創出に大きな役割を果たしました。野島の支援により、伊奈は自身の理論を広く発表する機会を得ることができ、『光画』は先進的な写真理論や海外の新しい写真作品を紹介する場となりました。

伊奈信男と野島康三のコラボレーションは、日本の写真界における新たな展開を促し、後の写真表現や評論活動に大きな影響を与えました。彼らの活動は、写真本来の価値を追求し、写真を通じた新しい美的視野を開拓することに貢献しました。その後も伊奈は、『光画』での同人活動を通じて、写真評論の先鋭化と国際的な視野の拡大に努め、日本の近代写真文化の発展に不可欠な役割を果たし続けました。

西洋美術と写真への深い洞察

伊奈は西洋美術史の学識を生かし、新しい写真の動向に注目。『ディ・フォルム』や『ダス・ノイエ・フランクフルト』などの外国美術雑誌を通じてヨーロッパの美術運動を日本に紹介し、写真に関する独自の視点を展開しました。

おすすめの写真集

写真に帰れ: 伊奈信男写真論集

  • 特徴:
    「写真に帰れ―伊奈信男写真論集」は、日本の近代写真批評を牽引した伊奈信男の著作集です。1932年の『光画』創刊号に掲載された画期的な論文「写真に帰れ」をはじめ、戦前から戦後にかけての半世紀にわたる彼の評論活動を集約した一冊。52編の論考に加え、口絵、解説、年譜、書誌データも収録されており、伊奈信男の足跡を網羅的に辿ることができます。
  • 見どころ:
    この論集の見どころは、写真への深い洞察と批評の幅広さにあります。伊奈が提唱した「写真本来の機械性」を基にした美学は、今日の写真表現にも大きな影響を与えています。また、昭和五十年史と写真家、二十世紀の写真家たちへの言及は、当時の写真界の動向やキーパーソンを理解する上で貴重な資料となっており、写真愛好家や研究者にとっては必読の内容です。伊奈信男の鋭い視点と先見の明によって綴られた各論考は、写真というメディアの可能性を再考させる刺激的な一冊となっています。

写真界への遺産

伊奈は名取洋之助、木村伊兵衛、原弘らと日本工房を設立し、報道写真や商業デザインにおける新たな方向性を示しました。また、戦後は日本の写真史を世界写真史の中に位置づける研究を行い、写真評論家、写真史家としての地位を不動のものに。彼の業績は、ニコンで設立された伊奈信男賞によって後世に引き継がれています。

伊奈信男の生涯と仕事は、写真本来の価値を見直し、新しい写真表現の可能性を広げるための重要な指針となりました。彼が残した膨大な著作とその思想は、今日も多くの写真家や評論家に影響を与え続けています。

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この記事を書いた人

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