夜のニューヨークを切り取る、ウィージーの世界
ニューヨークの夜、その暗闇に潜む犯罪現場や緊急事態を鮮明に捉えた写真家、ウィージー(Weegee、本名アーサー・フェリグ、Arthur (Usher) Fellig、1899 – 1968)。彼の生み出した刺激的な作品群は、今も多くの人々を魅了し続けています。このブログでは、ウィージーの生涯をゼロから振り返り、彼がニューヨークで築き上げた業績、彼独自の技術、そして彼が写真界に残した深い影響について掘り下げていきます。オーストリア=ハンガリー帝国(現ウクライナ)のズロチウから1909年に家族と共に新たな人生を求めてニューヨークに渡り、様々な職を経て1924年に写真の道を歩み始めたウィージー。1935年には独立し、フリーランスの写真家としてマンハッタンの夜を舞台にそのキャリアを花開かせます。
街の記憶を切り取る
ウィージーは、特に1930年代から1940年代にかけて、マンハッタンのロウアー・イースト・サイドで夜間に活動。緊急サービスに追随し、その活動をドキュメント化することで、都市生活のリアルな一面を捉えました。彼の作品は「Life」誌や「Daily News」など、数多くの出版物に掲載され、高い評価を受けています。
独学の天才
ウィージーは、特にフォトジャーナリズムの技術を独学で身につけた自己流の写真家でした。彼の写真撮影テクニックは、「f/16、シャッタースピード1/200秒、フラッシュ使用、焦点距離10フィート固定」という基本に忠実で、それでいてその作品からは独特の視点と深い洞察が感じられます。
おすすめの写真集
Weegee: The Autobiography
- 特徴:「Weegee: The Autobiography」は、ニューヨークの裏社会を生き、その生々しい現実を写真に収めたウィージー自身の手による自伝です。Devault-Graves Digital Editionsによって完全かつ未删削のテキストで復刊されたこの作品は、彼が写真界の伝説となる前の人生を振り返っています。貧しいユダヤ系移民、アーサー・フェリグがいかにして世界でも最も厳しい都市の一つであるニューヨークと向き合い、それを自分のものにしたか、その物語が語られます。
- 見どころ:ウィージーの独特な視点と生き生きとした語り口で描かれるこの自伝では、彼の写真と同じくらい魅力的な人生が明らかにされます。子供たちのポニーのティンタイプ写真から始まり、ニューヨークの街のすべての殺人、災害、心痛の現場に最初に駆けつけるようになるまでの彼の道のりが語られます。さらに、Murder, Inc.による街頭処刑、炎上するテナメントハウス、児童殺害者、映画館の後列での恋人たち、そして売春婦、ポン引き、トランスジェンダーの性的冒険に至るまで、ウィージーが見てきた全てを率直かつ遠慮なく語ります。ウィージーの写真のファンであれば、彼の話を彼自身の言葉で読むことは見逃せません。この新しいDevault-Graves Digital Editions版には、作家兼評論家エド・ウォードによるオリジナルのアフターワードや、広範な注釈とエンドノートが含まれており、読者に新たな資料を提供します。
写真界に残した足跡
ウィージーの写真は、ダイアン・アーバスなど後世の写真家に多大な影響を与えました。彼のテーマは、裸体、サーカスパフォーマー、フリークス、ストリートピープルと多岐にわたり、彼らの真実を赤裸々に捉えることで、写真が持つ力を新たな次元へと押し上げました。ウィージーの遺産は、国際写真センター(ICP)によって保管・展示され、彼の作品は今日もなお、新たな世代の視覚文化を形成しています。
ウィージーのレンズを通じて見るニューヨークは、暗闇の中にも生命が息づいていることを我々に教えてくれます。彼の写真は、時代を超えて、見る者に強いメッセージを投げかけ続けています。