「関係性の探求者」 – 写真に見る他者との対話
写真家 長島有里枝(ながしま ゆりえ、1973年 – )は、東京生まれ。1995年に武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科を卒業後、1999年にはカリフォルニア芸術大学でファインアート科写真専攻の修士課程を修了しました。彼女は1993年の現代美術の公募展「アーバーナート#2」でパルコ賞を受賞し、その後、多くの受賞歴を重ねています。これには、2001年の第26回木村伊兵衛写真賞、2010年の第26回講談社エッセイ賞(短編集『背中の記憶』)、そして2020年の第36回写真の町東川賞国内作家賞が含まれます。
長島は日常の違和感をテーマに、他者や自己との関係性を掘り下げる作品を制作しており、女性のライフコースに焦点を当てたインスタレーション作品も発表しています。主な個展には、「知らない言葉の花の名前 記憶にない風景 わたしの指には読めない本」(2019年、横浜市民ギャラリーあざみ野)や「そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」(2017年、東京都写真美術館、東京)などがあります。また、彼女の近著には『Self-Portraits』や『テント日記/「縫うこと、着ること、語ること。」日記』などがあります。
「写真を通して紡ぐ女性の物語」 – 国際的な業績とその影響
長島有里枝は、1990年代からの活動を通じて、特に女性の身体とアイデンティティをテーマにした作品群で注目を集めました。代表作『Self-portraits』は、自己の変化と女性としての自己認識を捉えた作品で、ニューヨークのDashwood Booksから出版されたことで国際的な評価を受けています。
「フェミニズムのレンズを通した表現」 – 理論と実践の融合
長島はフェミニズム理論を学び、その知識を活かして1990年代の「女の子写真」に挑戦する作品を制作しました。『「僕ら」の「女の子写真」からわたしたちのガーリーフォトへ』は、彼女の理論的背景と実践的アプローチを示す著書であり、多くの議論を呼んでいます。
おすすめの写真集
SWISS
- 特徴:
「SWISS」は長島有里枝が2007年のスイス滞在中に制作した作品集で、彼女の個人的な体験と家族の記憶が融合しています。この写真集は、亡き祖母が撮影した花の写真にインスパイレーションを受け、その精神を継承しながら、長島自身がスイスで撮影した草花や息子の日常を捉えたものです。写真ページとテキスト、クラフトペーパーがランダムに綴じられたスクラップブックスタイルで、読者に新たな体験を提供します。 - 見どころ:
「SWISS」の見どころは、20色もの布で覆われた表紙のバリエーションにあります。これは、手に取る人それぞれの個性や心情に寄り添うデザインとなっており、一冊一冊が異なる表情を持つことで、所有する喜びをさらに深めます。また、航空券のしおりやメモ書きが挟み込まれている点も特徴的で、長島が旅で感じた時間の流れや心の動きを感じさせる内容となっています。この独特な構成は、視覚的な美しさだけでなく、触れることで感じる物語性も魅力の一つです。
Self-Portraits
- 特徴:
長島有里枝による写真集『SELF-PORTRAITS』は、彼女自身が選び抜いた24年間にわたる自撮り写真約700点から成る集大成です。この作品は、学生時代のバックパッカーとしての旅から親になった現在に至るまでを網羅しており、彼女の成長と変化を捉えたモノクロ写真が中心です。自身を被写体にすることで、性別の役割に対する長年の問いかけと抵抗が表現されています。 - 見どころ:
『SELF-PORTRAITS』は、作者が自らの人生の軌跡を辿りながら、時代や環境の変化に応じて進化する自己表現を描いています。これらの作品は、2017年に東京都写真美術館での個展「そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々」でスライドショーとして展示され、訪れた人々に深い印象を与えました。自分自身の変化を捉えた写真は、観る者に自己反省と自己発見のきっかけを提供します。
「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ
- 特徴:
長島有里枝の著作『「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ』は、1990年代のガーリー文化とその表象に挑む洞察に満ちた一冊です。彼女の鋭い分析は、かつての「かわいい」とされた女の子像に対する社会的な認識を問い直し、女性たちが直面する困難と抵抗の歴史を浮き彫りにします。この作品は、女性の誇りと尊厳に焦点を当て、新しい時代の女性たちへのメッセージとして機能します。 - 見どころ:
この書籍は、現代社会における女性の立ち位置と自己表現について深く掘り下げています。太田莉菜の推薦の言葉にもあるように、「めちゃくちゃ強くてしなやかでカッコいい」という新しいガーリー像を提示しながら、読者に自己認識と表現の重要性を問います。この本は、ただの美学やスタイルの議論を超え、女性がどう生きるかについての本質的な対話を促す一作です。
去年の今日
誰かのために ここにいる。
かけがえのない存在がいなくなってからの日々。
互いに思いやりながらの関係と優しい距離。悲しみに寄り添うこと。
『背中の記憶』から14年ぶりの小説、連作小説集。
【収録作品】
翌日
フィービーちゃんと僕
灯台と羽虫
チャイとミルク
去年の今日
「写真芸術を通じた社会変革」 – 長島有里枝の影響力と女性への励まし
長島有里枝は、写真家としてだけでなく、教育者としても影響を与えています。特に若い女性に自己肯定感と自己実現の重要性を説く彼女のメッセージは、多くの共感を呼び、社会における女性の地位向上に寄与しています。彼女の作品は、社会的性別役割への疑問を投げかけ、新しい世代のクリエイターに影響を与え続けています。