高知から世界へ
岡上淑子(おかのうえ・としこ、1928年-)は高知県出身で、文化学院デザイン科を卒業後、22歳から約7年間にわたり独学でコラージュを制作しました。彼女の才能は瀧口修造に認められ、タケミヤ画廊での個展を開催するなど、早期からその独自の世界観が注目されました。2000年には、44年ぶりの個展「夢のしずく」を開催し、その後も国内外で作品が展示されるなど、長い沈黙を経て再び芸術界での活躍を見せています。岡上の作品は、その革新的なアプローチと深い表現力で、後世に多大な影響を与え続けています。
初期作品からの評価
文化学院卒業後、岡上はコラージュ作家としてデビュー。1953年には初の個展を開催し、その後も「抽象と幻想」展に出品するなど、コラージュとモノクロ写真の分野で注目を集めました。1996年には写真史家の金子隆一によって再発見され、その芸術性が再評価されます。
コラージュの可能性
岡上の作品は、ファッション誌やグラフ誌を素材にしたコラージュで知られています。マックス・エルンストの影響を受けつつも、独自の感性で時代を超える作品を生み出しました。彼女の作品は、視覚的に魅力的でありながら、当時の社会や文化への洞察を垣間見ることができます。
おすすめの写真集
はるかな旅: 岡上淑子作品集
- 特徴:
『はるかな旅: 岡上淑子作品集』は、1950年代に瀧口修造によって「現代版不思議の国のアリス」と評された岡上淑子のフォト・コラージュ作品を集めた決定版です。自選77点の作品に加え、全作品一覧表が収録されており、岡上淑子のコラージュ作品を網羅的に楽しむことができます。瀧口修造の発見によって注目を浴び、その後長い沈黙を破り再評価された岡上の作品世界が、この一冊に凝縮されています。 - 見どころ:
本作品集の見どころは、岡上淑子が22歳から7年間にわたって独自に制作したコラージュ作品の深さと広がりです。「海を翔る性」「苦悩のレダ」「郷愁の罠」といった作品は、青い空気の中で輝き、読者に強烈な印象を与えます。彼女の作品には、自由を謳歌する女性たちの姿があり、その中に見え隠れする社会への洞察や批評が、岡上淑子のコラージュの鮮烈な特徴として際立っています。
美術界への再評価
長いブランクを経て、2000年に個展「岡上淑子 フォト・コラージュ-夢のしずく-」を開催。この展示は彼女の作品世界への再注目を促しました。2018年には「岡上淑子コラージュ展―はるかな旅」が高知県立美術館で開催されるなど、その芸術的足跡は、昭和から現代にかけての日本美術史において、重要な位置を占めています。