プロフィール:東京からパリへ、自由な発想で写真の可能性を広げる
写真家 オノデラユキは1962年、東京に生まれました。デザインを学んだ後、独学で写真の道を歩み始め、1993年には活動拠点をパリに移します。彼女のスタイルは非常にユニークで、日常的なモチーフに手作業を加えたり、カメラの構造自体を変えるなど、写真というメディアの本質に挑戦する作品を多数制作しています。特に、ファッションデザイナーとしての感覚や、立体的な発想が作品にも反映されており、写真家でありながら彫刻家や画家のようなアプローチも特徴です。同時代には、写真評論家の飯沢耕太郎氏や、現代美術のキュレーター南條史生氏らが彼女の活動に注目しており、国際的な舞台で評価される存在となっています。

業績と実績:写真の常識を覆す革新者と国際的評価
オノデラユキは、1991年にキヤノン主催の第1回「写真新世紀」公募展で優秀賞を受賞し、日本写真界で鮮烈なデビューを飾りました。審査員は飯沢耕太郎氏、南條史生氏、荒木経惟氏で、既成概念を覆す彼女の作品は当時から異彩を放ちました。この受賞を機に翌年にはパリへと拠点を移し、国際的に活動を展開します。
2003年には『カメラキメラ』で第28回木村伊兵衛写真賞を受賞し、2006年にはフランス写真界で最も権威あるニエプス賞も受賞しました。作品はポンピドゥー・センター(フランス)やサンフランシスコ近代美術館、東京都写真美術館など、世界中の美術館に収蔵・展示されています。

おすすめの写真集
camera Chimera(カメラキメラ)
専門知識とスキル:写真×現代美術の交差点で生まれる技術と表現
オノデラユキの専門性は、写真というメディアを素材として捉える視点にあります。彼女の作品はデジタル加工ではなく、アナログな手法—手彩色、フォトグラム、暗室処理など—にこだわりがあり、プリントサイズも2メートル以上に及ぶ大作が多数あります。こうした制作には、徹底した計画と試行錯誤が必要で、まさに「写真職人」とも言える技術が詰まっています。また、ギャラリストの千葉由美子(YUMIKO CHIBA ASSOCIATES)や、キュレーターの石原悦郎(ツァイト・フォト)らとの交流を通じて、展示空間や鑑賞体験も含めた作品づくりを重視している点も注目です。さらに、近年では身体性や建築をテーマとした大判のコラージュ作品『建築的身体と事件』なども制作しており、写真と現代アートの境界を探る先駆的な存在として高く評価されています。

影響と貢献:写真界に問いを投げかけ続ける存在
オノデラユキが注目されるのは、彼女が常に写真の在り方そのものに疑問を投げかけてきたからです。コンセプトフォト、ファウンドフォト、ミクストメディアなど、多くの手法を縦横無尽に取り入れ、視覚的な驚きと知的な刺激を同時に与える作品を生み出してきました。こうした姿勢は、同世代の写真家たち、特に女性写真家たちに大きな影響を与えており、蜷川実花、澤田知子、野口里佳などの作家にも通じる部分があります。また、若手の登竜門である「写真新世紀」の審査員としても活動し、深い洞察と鋭い質問で若い才能の育成にも尽力しています。現代の日本写真における新たな表現の可能性を切り拓く存在として、今後も見逃せません。

