化学から写真へ、内藤正敏の転機
東京生まれの内藤正敏(ないとう まさとし、1938-)は、早稲田大学で化学を専攻し、その後フリーの写真家として活動を開始しました。独自の視点で「SF写真」を手がけた内藤ですが、25歳の時、即身仏に出会い、その後修験道に興味を持つようになりました。この出会いが、彼の芸術家としての転機となり、東北の民間信仰や修験道への深い関心を持つきっかけとなりました。
写真と民俗学の融合
内藤正敏は、写真家としてだけでなく、民俗学者としても多大な業績を残しています。「婆バクハツ!」や「遠野物語」などの写真シリーズは、東北地方の民間信仰や即身仏をテーマにしたもので、これらの作品は内藤の独特な世界観を形作っています。土門拳賞や日本写真協会年度賞を受賞し、その独特な作風と研究は国内外で高く評価されています。
異界を写し出す視点
内藤正敏の作品は、ただの写真作品を超え、見る者に深い洞察を与えます。「モノの本質を幻視できる呪具」としての写真と、「もう一つのカメラ」としての民俗学を駆使し、彼は現世の向こう側に存在する「異界」を捉えてきました。このユニークなアプローチは、彼が持つ深い専門知識と高度な技術から生まれています。
おすすめの写真集
日本の写真家〈38〉内藤正敏
文化と歴史への深い洞察
内藤正敏の影響は写真界にとどまらず、民俗学や日本文化の研究にも及びます。東北地方や都市の闇、そして修験道など、彼の興味の対象は多岐にわたります。彼の作品と研究は、日本の隠された思想体系を明らかにし、後世の研究者や芸術家に大きな影響を与えています。内藤正敏の貢献は、彼の独自の世界観と生命観に根差したもので、これからも多くの人々に影響を与え続けるでしょう。