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光と影の物語師: 細江英公の世界

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写真家の原点

細江英公(ほそえ えいこう、1933-)は、山形県米沢市出身、東京育ちの写真家です。若き日に富士フォトコンテストで最高賞を受賞し、東京写真短期大学(現・東京工芸大学)卒業後、フリーランスの道を歩みます。1959年には、東松照明、奈良原一高と共にVIVOを結成。国内外での展覧会開催や後進の育成に尽力し、写真界の発展に大きく貢献しました。

写真教育への献身

細江は、大学やワークショップでの写真教育にも力を入れ、多くの後進を育て上げました。特に、清里フォトアートミュージアムの初代館長として、また東京工芸大学名誉教授としての役職を通じて、写真文化の普及と発展に寄与。英国王立写真協会から特別勲章を受章し、2010年には文化功労者に顕彰されました。

新たな写真表現の追求

細江の作品は、彼独自の人間味あふれる視点と既成概念に挑む精神から生まれます。三島由紀夫の『薔薇刑』や舞踊家土方巽を題材にした『鎌鼬』など、彼の作品は社会への鋭い視線と深い芸術性を兼ね備えています。写真家としての幅広い活動は、後世に多大な影響を与え続けています。

おすすめの写真集

鎌鼬(普及版)

  • 特徴:
    『鎌鼬』は、写真家細江英公と舞踏の創始者土方巽との間で生まれた、極めて特異なアートプロジェクトの成果です。この作品は、巣鴨のとげぬき地蔵、葛飾界隈、そして秋田の伝統的農村風景という、日本の原風景を背景に、土方巽のパフォーマンスを捉えたもの。細江のカメラは土方の疾走する魂と肉体に共鳴し、日本の風土、生と死の深淵を捉えています。細江が半世紀以上にわたって追求し続けた内面的意識の写真表現は、『鎌鼬』において顕著に表れており、その独自の映像美学は国際的にも高く評価されています。
  • 見どころ:
    『鎌鼬』の見どころは、ただの写真集を超えた、文化的背景と芸術的深さにあります。未発表作品8点を含む、土方巽と細江英公の濃密なコラボレーションによって生み出された画像群は、見る者を1960年代の日本へとタイムトラベルさせ、肉体と精神の極限状態を目の当たりにさせます。また、瀧口修造の序文、ドナルド・キーンの随筆、三好豊一郎の詩、高橋睦郎の鎌鼬賛など、著名な文化人たちの寄稿が作品の多層的な理解を深めてくれるでしょう。田中一光による造本も見逃せません。『鎌鼬』は、写真と舞踏が交わる地点で、日本の美意識と反逆精神が融合した、唯一無二のアートピースです。

写真文化の拡張者

細江は、東松照明や奈良原一高らとの深い交友関係を通じて、写真表現の可能性を拡げました。また、パブリックコレクションの形成や、息子の細江賢治をはじめとする若手写真家の育成にも注力。彼の遺した作品と教育活動は、写真を通じた表現の豊かさと教育の重要性を今に伝えています。

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