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ニュー・ドキュメンタリーの誕生:個人の視点で世界を映す

目次

「ニュー・ドキュメンツ」展と「ニュー・ドキュメンタリー」の流れ

1967年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催された「ニュー・ドキュメンツ」展は、ドキュメンタリー写真に新たな方向性を示し、その後の「ニュー・ドキュメンタリー」という流れを決定づける重要なイベントでした。ジョン・シャーカフスキーがキュレーションを手掛け、ダイアン・アーバス、リー・フリードランダー、ゲイリー・ウィノグランドの3人の作家たちは、60年代以降の新しいドキュメンタリー写真の代表とされています。

展示の背景と評価

この展示は、「ドキュメンタリー写真だが、当時知られていたり理解されていた形ではない」として、その時代に「革新的」とも「時代に逆行する」とも評されました。ジェイコブ・デシンなどの批評家がニューヨーク・タイムズで示した懐疑的な意見にも関わらず、展示後には彼らが彼らの世代を代表する才能として広く認識されるようになりました。彼らの作品は、後に続く写真家たちに多大な影響を与えました。

「ニュー・ドキュメンタリー」の定義

「ニュー・ドキュメンタリー」は、従来の社会的問題を指摘するドキュメンタリー写真から一線を画し、より個人的な視点からのアプローチを採るスタイルを指します。この潮流は、66年にジョージ・イーストマン・ハウス国際写真美術館で開催された「社会的風景へ向って」という展示に参加した写真家たちと共に、新たなドキュメンタリーの方向性を形作っています。

展示内容と巡回情報

「ニュー・ドキュメンツ」展は、35mmハンドヘルドフィルムカメラで撮影された94枚の白黒写真(アーバス32枚、フリードランダー30枚、ウィノグランド32枚)で構成されていました。ウィノグランドによる80枚の35mmカラースライドも、MoMA以外の会場では展示されましたが、技術的困難のため一部では除外されていました。

この展示は、1967年2月28日から5月7日までニューヨークの近代美術館で開催され、その後アメリカ各地を巡回しました。巡回先にはメリーランド州タウンソンのゴウチャー大学、コネチカット州のマクマスター大学、ニューヨーク州バッファローの州立大学、コーネル大学、ロングアイランド大学、ダートマス大学、コンコーディア大学、ウィッテンバーグ大学、ミズーリ大学、クラネルト美術館(イリノイ大学)、アマースト大学、ウェスリアン大学、ノートルダム大学、そしてサンフランシスコ美術館などが含まれます。

日本における「ニュー・ドキュメンタリー」

日本では、「コンポラ写真」として知られる「社会的風景へ向って」に対応する潮流が、「ニュー・ドキュメンタリー」のスタイルとして期待されました。カメラ雑誌上で「ニュー・ドキュメンタリー」という呼称を与えられたのは、秋山亮二、土田ヒロミ、須田一政などの作家たちの作品です。また、2011年に金沢と東京で巡回展示されたホンマタカシの写真展にも「ニュー・ドキュメンタリー」というタイトルが用いられ、撮影者が捉えた現実をストレートに表現するドキュメンタリーという考え方を、意図的に裏切るアプローチが展開されました。

おすすめの写真集

Arbus Friedlander Winogrand: New Documents, 1967

  • 特徴:
    『Arbus Friedlander Winogrand: New Documents, 1967』は、ジョン・シャーカフスキーによる画期的な展示「New Documents」の50周年を記念して出版された写真集です。この展示は、ダイアン・アーバス、リー・フリードランダー、ゲイリー・ウィノグランドという、当時はあまり知られていなかった3人の写真家の作品を紹介し、20世紀の写真の風景における深い変化を表現しました。本書では、展示に含まれた94点の写真がフルページで再現されており、ザーカウスキーのオリジナルのウォールテキスト、プレスリリース、インスタレーションビュー、豊富なアーカイブ資料が収録されています。
  • 見どころ:
    この写真集は、アーバス、フリードランダー、ウィノグランドという後に写真史における独自の才能を認められることになる3人のアーティストたちの初期の作品を集めたものです。特に注目すべきは、彼らの作品が示すドキュメンタリー写真におけるパーソナルなアプローチと、それが如何にして「人生を知る」ためのものであったかです。キュレーターのサラ・ハーマンソン・マイスターと、1967年の展示を最初にレビューした批評家マックス・コズロフによるエッセイは、展示の意義とその受容、そして写真分野におけるその持続的な影響を深く掘り下げています。これらのエッセイは、写真というメディアの芸術的可能性を理解する上で貴重な洞察を提供します。

おわりに

「New Documents」展は、ジョン・シャーカフスキーの巧みなキュレーションにより、写真が個人的な視点をどれだけ強く反映できるかを示した画期的な展示であり、それぞれの作家が独自の視点から世界を捉え、新たなドキュメンタリー写真の方向性を確立しました。この展示とその後の「ニュー・ドキュメンタリー」の流れは、写真表現の可能性を大きく広げ、今日でも多くのアーティストや写真家に新たなインスピレーションを提供し続けています。これらの写真家たちの革新的な視点は、写真を通じて私たち自身の見方を再考させ、写真が単なる記録であるだけでなく、深い感情や考えを伝える手段であることを改めて認識させます。

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この記事を書いた人

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