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今森光彦:里山を生き、撮り、守る“環境農家”の自然写真家

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里山に生きる写真家:今森光彦とは?

今森光彦(いまもり みつひこ/1954年〜)は、滋賀県出身の自然写真家・切り絵作家であり、近年では「環境農家」「里山環境プロデューサー」としても活動しています。幼い頃から昆虫や野鳥、淡水魚など、生き物全般に魅了され、自然の中で育った体験が彼の写真の原点です。仰木地区に構えたアトリエを拠点に、琵琶湖周辺の自然と人の営みを記録してきた今森氏は、「写真とは表現である」と語ります。生き物との共存を見つめた作品群は、私たちに“自然の隣人”としての感覚を呼び覚まします。

独学から始まった自然写真家の道

今森氏がプロ写真家として独立したのは1980年。大学卒業後、コマーシャルフォトのスタジオで2年間修行を積み、自然写真家の道を独学で切り拓いていきました。昆虫写真を中心に活動を始め、1988年には写真集『昆虫記』を出版。この作品は、身近な昆虫を長年の観察と撮影を通して捉えたもので、自然の営みへの深い洞察と愛情が評価されました。「僕の写真は小さな頃の自然体験が支えている」と語る今森氏。被写体との距離感、丁寧な観察眼、そして“感性の栄養”を得る力が、唯一無二の作風を生み出しています。

自ら農家になってまで、里山を記録し続ける理由

今森氏の自然観は、やがて写真という枠を超え、「環境農家」としての実践へと広がっていきます。耕作放棄地だった3ヘクタールの農地を自ら開墾し、昔の里山の風景を取り戻したのです。農薬を使わず、生物多様性を最優先に考える農業は、「生き物のことを考える農業」だと今森氏は語ります。このプロジェクトの核心には、「写真の対象と近づきすぎて、カメラを持てなくなった」という葛藤がありました。それでも、「いつか、里山の内側から出てきた時、新しい写真が撮れる」と話す姿に、真の探究者の姿勢が垣間見えます。

おすすめの写真集

世界昆虫記

  • 特徴
    『世界昆虫記』は、写真家・今森光彦が世界中を旅して記録した、壮大な昆虫ドキュメント写真集です。オオカバマダラの集団越冬やサバクワタリバッタの大移動など、スケール感のある生態現象を、高度な技術と鋭い観察眼でとらえています。ラフレシアの受粉、17年ゼミの大発生など、普段見ることのできない神秘的な瞬間が満載。木村伊兵衛写真賞も受賞した、自然写真の金字塔とも言える一冊です。
  • 見どころ:
    この写真集の最大の見どころは、昆虫という小さな存在が見せる壮大な営みを、美しく力強く描き出している点です。特に「ホタルツリー」の幻想的な光の饗宴や、熱帯雨林で見つけた希少な昆虫たちのアップは圧巻。今森氏のレンズは、ただ撮るだけでなく、生きものの命の輝きと、その背景にある環境のメッセージまでも伝えています。自然や生態系に興味がある人、感性を育てたい人にぜひ手に取ってほしい作品です。

里山─生命の小宇宙─

  • 特徴:
    『里山─生命の小宇宙─』は、今森光彦が50年にわたって見つめ続けた“日本の原風景”を網羅した、決定版ともいえる写真集です。琵琶湖周辺から全国200カ所以上の里山を記録し、四季の移ろい、人と自然の共存の美しさを丁寧に描いています。今森氏の言葉と共に綴られる写真は、ただ美しいだけでなく、未来に受け継ぐべき自然のあり方を教えてくれます。自然を感じたいすべての人におすすめです。
  • 見どころ:
    本書の見どころは、今森氏の視点で切り取られた日本各地の“生きている里山”の四季折々の姿です。春の菜の花畑、夏の蛍、秋の紅葉、冬の雪原──それぞれの季節に息づく命の営みが、ページをめくるごとに伝わってきます。人の手が自然に与える豊かさを知ることができる一冊で、写真だけでなく、今森氏の語り口も深い共感を呼びます。暮らしと自然がつながる感覚を味わいたい方にぴったりです。

だれだかわかるかい?―むしのかお (かがくのとも傑作集 どきどきしぜん)

  • 特徴:
    『だれだかわかるかい?』は、昆虫たちの“顔”にズームインしたユニークな写真絵本。今森光彦が撮影したインパクト抜群のクローズアップが並び、「この顔、だれの顔?」と問いかける構成で、親子で楽しめる内容になっています。真剣な表情、不思議な目つき、ちょっと笑える顔まで、昆虫たちの個性が全開! 名前を当てながら自然と昆虫に親しめるので、虫好きの子どもはもちろん、虫が苦手な人にもおすすめの一冊です。
  • 見どころ:
    この本の見どころは、なんといっても昆虫の顔をこんなに間近で見られること。クワガタやカマキリ、トンボなど、見慣れた虫たちの“意外な表情”に驚かされます。迫力満点でありながら、どこかユーモラス。図鑑とは違う視点から虫を知ることで、観察力や興味が自然に育まれます。遊びながら学べる構成で、読み聞かせにもぴったり。虫の世界にぐっと引き込まれる、感性を育てる写真絵本です。

“感性の栄養”を次世代へ──昆虫教室と教育活動

今森氏は、自らの農地「オーレリアンの丘」で、毎夏「里山昆虫教室」を開催しています。100人を超える子どもたちが、昆虫とふれあい、自然の匂いを感じながら“感性の栄養”を育んでいます。「昆虫の名前を覚えるのではなく、環境を体験することが大切」と語る今森氏。自然は五感で味わうものであり、教科書では得られない感覚を子どもたちに伝えたいという思いが根底にあります。その活動は、自然教育の枠を超え、“自然と共に生きる力”を次世代に育てるライフワークとなっています。

まとめ|今森光彦の里山写真が語る「未来の風景」

今森光彦の写真は、美しさを超えて、私たちに問いかけます。「この風景は未来に残せるだろうか」と。都市化や農業の効率化によって失われつつある里山の風景。それでも今森氏は、「日本列島は個性的な里山がつながってできている」と希望を語ります。私たち一人ひとりが自然に関心を持ち、足を運び、感じることが、里山の未来を支えるのです。写真家として、農家として、そして表現者として、今森氏はこれからも“生命の風景”を伝え続けるでしょう。

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この記事を書いた人

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