ニュー・カラー写真の誕生とその背景
カラー写真技術は1940年代にほぼ実用化されましたが、長らく報道や広告の分野での利用が主で、アートとしての評価は低く、色の再現性や保存性の問題が指摘されていました。しかし、1960年代から1970年代にかけて、カラー写真の技術的な課題が解決されると、新しい世代の写真家たちが登場し、彼らの独自のカラー写真表現は「ニューカラー」と称されるようになりました。この「ニューカラー」という言葉は、サリー・オークレアの著書『ザ・ニュー・カラー・フォトグラフィ』から取られたものです。
モノクロームからカラーへの転換点
1976年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)でウィリアム・エグルストンの個展「カラー写真」が開催され、これがカラー写真が美術作品として認められる契機となりました。この展示は、ジョン・シャーコフスキーによって企画されたもので、ニュー・カラーをめぐる議論の礎(いしずえ)ともなり、カラー写真が新たな表現の道を切り開くことを示しました。
ニュー・カラーの主要な写真家たち
サリー・オークレアによる著書『ザ・ニュー・カラー・フォトグラフィ』(1981年)では、ウィリアム・エグルストン、スティーブン・ショア、ジョエル・スターンフェルド、ジョエル・メイエロウィッツ、レン・ジェンシルなどがニュー・カラーの代表的な写真家として紹介されました。これらの写真家は、光の効果を印象的に用いたカラー写真で知られ、「ニュー・アメリカン・ルミニズム」という呼称も用いられることがあります。
カラー写真の技術革新と写真家たちの挑戦
カラー写真は20世紀初頭から存在しており、オートクロームやコダクロームなどが開発されていました。特にエリオット・ポーターは、1946年にダイ・トランスファー法を習得し、自在に色調や彩度をコントロールすることで高品質なカラー写真を作り出していました。また、エルンスト・ハースは1950年代にカラー写真で抽象的なイメージを作り出し、カラー写真の可能性を広げていきました。
ニュー・カラーの写真家たちの影響と展開
ニュー・カラーの写真家たちは、モノクロ写真家たちに刺激を受けつつ、カラー写真という新たな表現手法で独自のスタイルを築きました。サリー・オークレアはその後も、『ニュー・カラー/ニュー・ワーク』(1984年)、『アメリカン・インディペンデンツ』(1987年)を通じてニュー・カラーに関する考察を深め、写真文化の発展に貢献しました。
おすすめの写真集
The New Color Photography
- 特徴:
サリー・オークレアの編集による『The New Color Photography』は、1970年代にニューヨーク近代美術館(MoMA)でジョン・シャーカフスキーがウィリアム・エグルストンの個展を開催して以来、カラー写真の芸術的認知が広まるきっかけとなった歴史的な背景を持つ作品集です。この書籍は、ニュー・カラーと位置づけられたアメリカの写真家たちの作品を集め、カラー写真がただの記録ではなく、独自の表現手段としての可能性を広げたことを示しています。 - 見どころ:
本書にはウィリアム・エグルストン、ジョエル・メイエロウィッツ、スティーブン・ショア、ミッチ・エプスタインといったアメリカを代表するニュー・カラーの写真家たちの作品が収録されています。また、ハリー・キャラハン、エメット・ゴーウィン、マーク・コーエン、デイヴィッド・ホックニーなど、異なるスタイルを持つ写真家たちの作品も含まれ、合計140点の図版がカラー写真の多様性と深さを伝えています。
まとめ
ニュー・カラーは、写真表現の新たな地平を切り開いた画期的な動きであり、これらの写真家たちは、カラー写真というメディアを通じて、写真芸術の新たな可能性を世に示しました。彼らの作品は、ただのカラー写真ではなく、その時代の文化や社会を反映した深い表現であり、今日の写真表現に大きな影響を与え続けています。