初期の生活と写真家への道
アーネスト・レヴィ・ツォロアーヌ・コール(Ernest Levi Tsoloane Cole、1940年3月21日 – 1990年2月19日)は、南アフリカ出身の写真家であり、アパルトヘイトの恐怖を世界に伝えた『House of Bondage』(1967年)で広く知られています。プレトリアのエールステルストで生まれた彼は、1953年にバンツー教育法が施行されると学校を辞め、ウルジー・ホール・オックスフォードの通信教育で学びました。1958年にドラム誌のアシスタントとしてキャリアをスタートさせ、多くの才能ある黒人南アフリカ人と交流し、反アパルトヘイト運動に身を投じました。
反アパルトヘイトの告発者
コールは、南アフリカ初の黒人フリーランス写真家として、ドラム誌やランド・デイリー・メール、サンデー・エクスプレスなどで活躍しました。彼の最も有名な作品である『House of Bondage』は、アパルトヘイトの社会的影響を記録したもので、1967年にランダムハウスから出版されました。この本は南アフリカで発禁処分を受けましたが、国際的には高い評価を得ました。また、フォード財団からの助成金を受けてアメリカの黒人家庭を研究するプロジェクトにも取り組みましたが、このプロジェクトは未完に終わりました。
写真を通じた社会の映し鏡
コールの写真は、その鋭い洞察力と感受性により、南アフリカおよびアメリカの黒人コミュニティの現実を鮮明に捉えています。特に、彼の作品は体系的な人種差別や社会的不平等を浮き彫りにするものが多く、その中でも『The True America』は、1960年代後半から1970年代初頭にかけてのアメリカ社会の複雑な現実を捉えています。彼の技術は、都市部や農村部の日常生活を鮮明に記録することで、観る者に深い印象を与えます。
おすすめの写真集
Ernest Cole: House of Bondage
- 特徴:
『House of Bondage』は、1967年に初版が発行されたアーネスト・コールの代表作であり、20世紀の最も重要な写真集の一つと称されています。この本は、アパルトヘイトの恐怖を世界に初めて暴露し、多くの写真家に影響を与えました。再発行された現代版には、最近発見された未公開作品の章が追加され、この重要な書籍を新たな視点で再評価しています。コールは、1950年代から60年代にかけて、アパルトヘイト下の黒人多数派の日常生活に埋め込まれた暴力の数々を写真で記録しました。 - 見どころ:
『House of Bondage』の見どころは、その強力な視覚的表現と政治的洞察力です。コールは鉱山労働者、警察、病院、学校など、アパルトヘイト体制下の日常生活の一部始終を捉えました。また、新版には「Black Ingenuity」というタイトルの未公開写真の章が追加され、アパルトヘイト下での黒人の創造的表現と文化活動が描かれています。コールの写真は、アパルトヘイト時代の社会的現実を深く掘り下げたものであり、再発行から55年後の今日でもその強力なメッセージを伝え続けています。
Ernest Cole: The True America
- 特徴:
『The True America』は、南アフリカの著名な写真家アーネスト・コール(Ernest Cole)が、1960年代後半から1970年代初頭にアメリカで撮影した写真を集めた初の出版物です。アパルトヘイトの恐怖を描いた『House of Bondage』(1967年)を発表後、コールはニューヨークに移住しました。この新たな環境で、彼はニューヨーク市の街並みや全米の黒人コミュニティを撮影しました。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの暗殺前後の数か月間にわたるコールの写真は、アメリカでの新たな自由と、体系的な人種差別の不平等に対する鋭い視点を反映しています。 - 見どころ:
『The True America』の写真は、アーネスト・コールが生前にほとんど公開しなかったものであり、彼の死後にスウェーデンで発見されたネガから復元されました。この貴重なコレクションは、アメリカ社会に関する重要な洞察を提供し、アメリカ写真史におけるコールの地位を確立します。特に、都市部や農村部の黒人コミュニティの日常を鮮明に捉えた彼の作品は、当時のアメリカ社会の現実を理解する上で貴重な資料となっています。この本を通じて、読者はコールの独自の視点と卓越した技術に触れることができます。
写真を超えた遺産
コールの作品は、アパルトヘイトに対する国際的な理解を深めるだけでなく、彼の死後に再発見された60,000枚のネガフィルムが、彼の遺産を後世に伝える重要な役割を果たしています。彼の写真はANC(アフリカ民族会議)の出版物にも広く使用され、反アパルトヘイト運動においても大きな影響を与えました。また、2022年に再発行された『House of Bondage』には、黒人コミュニティの創造的表現と文化活動の新たな視点が加えられ、彼の作品の多様性と影響力を改めて示しています。