写真の力で世界を変える、そんな魔法のような体験を

潮田登久子:静寂の中のドラマ

目次

東京から始まる物語

東京都に生まれた潮田登久子(うしおだ・とくこ。1940-)は、1960年に桑沢デザイン研究所に入学し、石元泰博、大辻清司といった名師の下で写真を学びました。初めて一眼レフカメラを手にした彼女は、渋谷の街を歩き、知らない人に声を掛けて撮影を始めたのです。これが彼女の写真家としての第一歩でした。

記録された日常

潮田登久子の代表作「冷蔵庫/ICE BOX」シリーズは、1992年に初めて発表され、その後「本の景色/BIBLIOTHECA」シリーズを通じて、本とその収納されている環境をモノクロプリントで捉えました。彼女の作品は、土門拳賞や日本写真協会賞作家賞、東川賞国内作家賞を受賞するなど、多大な評価を受けています。

冷静な視線

潮田登久子の写真は、被写体に冷静で距離を置いた視線で接近します。彼女は自然光のみを使用し、細部にわたって精密な構成を施します。特に「冷蔵庫」シリーズでは、日常生活の一部である冷蔵庫を、扉を開けた状態と閉じた状態で撮影することにより、家庭内の人々の生活を垣間見ることができます。

おすすめの写真集

本の景色 (SERIE BIBLIOTHECA 3)

  • 「本の景色」:時を超える書籍たちの物語
    潮田登久子による「本の景色・BIBLIOTHECAシリーズ」の第3巻は、長年にわたり撮りためられた本とその環境の写真が集約された、特別な写真集です。この作品は、書籍の静謐な美しさを捉えたものであり、第37回土門拳賞を受賞するなど、その芸術性が高く評価されています。
  • 特徴:書籍の多様な物語を紡ぐ
    「本の景色」は、単なる書籍の写真集を超えた深い意味を持っています。江戸時代の帳簿や14世紀の祈祷書、使い込まれた辞書など、一冊一冊の書籍が持つ独自の物語を、潮田登久子はそのカメラを通して紡ぎ出しています。彼女の繊細な感性で撮影された本の写真は、オブジェとしての本の美しさだけでなく、時間を超えた書籍たちの静かな語り口を伝えてくれます。
  • 見どころ:物語を感じさせる「本の景色」
    このシリーズの魅力は、古書から現代の書籍まで、幅広い時代の本が持つ独特の「景色」を捉えている点にあります。図書館や作家の部屋に並ぶ本棚から、1冊の書籍をクローズアップして撮影された写真まで、それぞれの「本の景色」からは、読者に様々な物語を想像させる力があります。潮田が1995年から撮りためた写真から選ばれた作品たちは、見る人それぞれに異なる感情や物語を喚起させることでしょう。

    潮田登久子の「本の景色」は、書籍を愛するすべての人へ贈る、時間と空間を超えた美の讃歌です。彼女の繊細な視点から捉えられた本の世界を通じて、読者自身の中に眠る物語を再発見する旅に出かけてみてください。

マイハズバンド

  • マイハズバンド」の世界
    潮田登久子の最新写真集「マイハズバンド」は、家族と共に過ごした洋館の一室での生活を切り取った作品集です。この写真集では、夫婦の日常とその裏に潜む深い感情が、潮田登久子独特の視点から描かれています。ここでは、この写真集の特徴と見どころを紹介します。
  • 特徴:時間を超えた家族の記録
    「マイハズバンド」は、夫・島尾伸三、そして娘のまほと共に過ごした日々を記録したものです。6×6フォーマットのBook 1と35mmフォーマットのBook 2、二冊組のこの写真集は、約40年の時を経て公開された貴重な家族の記憶を紐解きます。Book 1では、潮田の得意とする正方形のフォーマットを用いて、家族のポートレートや日常の風景が静謐に捉えられています。一方、Book 2では、35mmのカメラで捉えたスナップショットが、よりカジュアルで親密な家族の一面を見せてくれます。
  • 見どころ:静寂と喧騒の間で
    この写真集の最大の魅力は、日常の中の静寂と喧騒、光と影を繊細に捉えた点にあります。洋館の一室での生活は、まさに「箱のような」空間でのシンプルながらも充実した日々でした。夫婦として、また親としての潮田登久子の視点から、生活の中の小さな瞬間が大切に収められています。特に、夜が訪れると静寂に包まれる部屋で、潮田がひとり孤独と向き合うシーンは、観る者の心に深く響きます。また、家族としての絆や日々の変化を、細やかな感情と共に描き出している点も見どころの一つです。

    潮田登久子写真集「マイハズバンド」は、ただの家族写真集ではなく、時間と空間を超えた深い愛と絆の記録です。潮田登久子の繊細な視点から捉えられた、夫婦、親子の日常の中にあるドラマを、是非ご自身の目で感じ取ってみてください。

写真による人間ドラマの映し出し

潮田登久子の作品は、日本の写真界において独自の地位を築いています。彼女は、写真を通じて人々の生活や文化の中にある普遍的な美しさや複雑さを捉え、見る者に新たな視点を提供しました。また、彼女の作品は、写真が持つ記録としての価値を再認識させるとともに、写真表現の可能性を広げるきっかけを提供しています。潮田の静かながらも力強い作品は、今後も多くの写真家や芸術家に影響を与え続けるでしょう。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

写真が好きなあなた、アートを学ぶ学生さん、プロのカメラマンにも、ぴったりの内容が満載!このサイトでは、写真家の作品を通して、感動の物語や心を動かす瞬間を共有します。写真の力で世界を変える、そんな魔法のような体験を一緒に楽しみましょう。

目次