ブルース・ギルデンの歩み
ブルース・ギルデン(Bruce Gilden、1946年生まれ)は、ニューヨークのブルックリンで育ちました。ペンシルベニア州立大学で社会学を学びましたが、退屈に感じて中退。その後、俳優になることを考えましたが、1967年にカメラを購入し、写真家の道を歩み始めました。視覚芸術学校で夜間クラスを受講しつつ、主に独学で写真を学びました。彼の初期のプロジェクトは、コニーアイランドとニューオーリンズのマルディグラでの撮影でした。彼の作品は、強烈なキャラクターとストリートのエネルギーを捉えることで知られています。ギルデンは、ロバート・キャパの「写真が十分に良くないなら、十分に近づいていない」という信念を持って、被写体に非常に近づくスタイルを貫いています。
世界を舞台にした撮影プロジェクト
ギルデンは1998年にマグナム・フォトに加入し、2002年には正会員となりました。彼はこれまでに、ニューヨーク、ハイチ、フランス、アイルランド、インド、ロシア、日本、イングランド、アメリカなどで長期にわたる詳細な写真プロジェクトを行ってきました。23冊の写真集を出版しており、その中には『Facing New York』(1992年)、『Cherry Blossom』(2021年)、『Black Country』(2022年)があります。また、彼の作品はニューヨーク近代美術館、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館、東京写真美術館、ロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館などの常設コレクションに収蔵されています。さらに、2013年にはグッゲンハイム・フェローに選ばれました。
フラッシュと近接の技法
ギルデンの写真スタイルは、フラッシュを使用して非常に近接した距離で撮影することが特徴です。この手法により、被写体のリアルな感情や個性を捉えることができます。彼は長年にわたり、主にモノクロ写真を撮影してきましたが、最近ではデジタルとカラー写真にも取り組んでいます。特に、マグナムのプロジェクト「Postcards From America」に参加した際にライカSカメラを紹介されてからは、カラー写真の制作も始めました。ギルデンは、ニューヨークの通行人やヤクザ、ホームレス、売春婦、バイクギャングなど、社会の多様な側面を撮影してきました。
おすすめの写真集
Bruce Gilden (Photofile)
- 特徴:
ブルース・ギルデン(Bruce Gilden、1946年生まれ)は、ニューヨークのブルックリンで育ち、視覚芸術学校で写真の授業を受けた後、写真家としての道を歩み始めました。ギルデンの特徴は、その強烈なストリートフォトグラフィーのスタイルにあります。彼は、ニューヨークの街頭で見かけるキャラクターやアウトサイダーに焦点を当て、その瞬間を捉えることで知られています。1998年からマグナム・フォトのメンバーであり、ハイチ、日本、アイルランドでも多くのプロジェクトを手掛けてきました。ギルデンの作品は、その鋭い観察力と大胆なアプローチで、被写体の本質とその社会的風景を見事に描き出しています。 - 見どころ:
『ブルース・ギルデン (Photofile)』は、ギルデンの代表的な作品を集めたフォトブックです。この本の見どころは、彼のストリートフォトグラフィーの真髄を余すところなく堪能できる点です。ギルデンは被写体に非常に近づき、広角レンズを使用して独特な迫力のある写真を撮影します。このフォトブックには、ニューヨークの街頭で捉えた強烈なポートレートや、ハイチ、日本、アイルランドでのプロジェクトからの選りすぐりのショットが収録されています。ギルデンの大胆かつ直感的なスタイルが、写真一枚一枚に力強さを与え、観る者を引き込むことでしょう。
Bruce Gilden: Haiti
- 特徴:
ブルース・ギルデン(Bruce Gilden、1946年生まれ)は、1984年に有名なマルディグラの祭りに参加するために初めてハイチを訪れました。彼が見つけたのは、数々の自然災害に見舞われた貧しい地域でありながら、独特のエネルギーに満ちた土地でした。ギルデンは、通常の観光ルートを外れ、島中を縦横無尽に歩き回り、ハイチの四方の人々と出会い、普通の人が避けるような状況にも直面しました。彼はその後18回にわたりハイチを訪れ、ハイチの歴史や地形、そして日常生活を丹念に記録し続けました。 - 見どころ:
『Bruce Gilden: Haiti』は、ギルデンがハイチで撮影した劇的で挑発的な写真を集めたフォトブックです。この本の見どころは、ギルデンの独自の視点から捉えたハイチの豊かな文化とビジュアルの多様性です。市場の商人から夜の娯楽、葬儀の儀式まで、ギルデンはハイチの日常生活を詳細に記録しています。1996年にデウィ・ルイスから出版されたモノグラフがヨーロピアン・パブリッシャーズ・アワードを受賞したのに続き、アトリエEXBから新たに刊行されたこのボリュームには、これまで未公開だった写真が多数収録されています。ギルデンの作品は、ハイチの困難な現実と同時に、その土地が持つ独特の活気と人々の強さを余すところなく伝えています。
Facing New York
- 特徴:
ブルース・ギルデン(Bruce Gilden、1946年生まれ)は、個性的な「キャラクター」に強い魅力を感じてきました。そのため、特異な市民と独特のエネルギーに満ちたニューヨークの街は、彼にとって巨大な創造の遊び場となりました。1992年に初版が出版され、長らく絶版となっていた『Facing New York』は、フォトブックの古典として認識されています。今回の新しいエディションでは、ギルデンが元の選択に不満を持っていた2枚の写真が新たに追加されました。 - 見どころ:
『Facing New York』の見どころは、ニューヨークの市民の独自性と都市の活気を捉えた強烈な写真です。ギルデンは、ニューヨークのストリートを舞台に、その瞬間を逃さずキャプチャーすることで、街の「キャラクター」を浮き彫りにします。このフォトブックには、通行人や路上での出会いが生き生きと描かれ、ニューヨークの多様性とエネルギーが伝わってきます。また、新エディションでは、ギルデン自身が当時の選択に疑問を持ち、改めて追加した2枚の写真が含まれており、彼の作品に対する洞察をさらに深めることができます。ギルデンの視点を通して、ニューヨークの街とその住民の本質に迫る一冊です。
ストリートフォトグラフィーへの革新
ギルデンの作品は、ストリートフォトグラフィーにおいて新たな方向性を示し、多くの写真家に影響を与えてきました。彼の写真は、被写体の本質とその背景にある社会的な物語を鮮明に描き出します。ギルデンは、「Misery Loves Company: The Life and Death of Bruce Gilden」というドキュメンタリー映画の題材にもなり、彼の人生と作品が広く紹介されています。また、彼の作品は数多くの展覧会で展示されており、その独特のスタイルと視点は、多くの観客を魅了し続けています。ギルデンの影響は、同時代の写真家ジョエル・マイヤーウィッツなどにも見られますが、彼らからは時に批判的な意見も受けています。それでも、ギルデンの貢献は、ストリートフォトグラフィーの領域において非常に大きなものと言えます。