カール・デ・ケイゼル：ベルギーの視覚詩人
カール・デ・ケイゼル（Carl De Keyzer）は、1958年にベルギーで生まれた著名な写真家です。1982年にフリーランスの写真家としてキャリアをスタートさせ、同時にゲントの王立美術アカデミーで写真の講師を務めました。彼の写真への情熱は他の写真家たちの作品にも及び、XYZ-フォトギャラリーを共同設立し、共同運営しました。1990年にマグナム・フォトの候補メンバーとなり、1994年に正式メンバーに昇格しました。現在もゲントに住み続け、教鞭をとりながら精力的に活動しています。
世界を写し取る：カール・デ・ケイゼルの代表作と受賞歴
カール・デ・ケイゼルは、数々の重要なテーマを取り上げた写真集を発表しています。代表作には、ソビエト連邦の崩壊を描いた『Homo Sovieticus』（1989）、シベリアの50の刑務所を訪れた『ZONA』（2003）、宗教の影響を探る『God Inc.』（1992, 2020）があります。彼の作品は、システムや権力構造が社会に与える影響を独自の視点で捉えており、多くの展覧会で高い評価を得ています。彼は、アルル国際写真フェスティバルのブックアワードやW. ユージン・スミス賞、コダック賞など、多数の賞を受賞しています。
写真術の探求者：カール・デ・ケイゼルの技法と視点
ケイゼルは、大判や中判のカメラを駆使して写真を撮影し、その作品は独自の累積的アプローチで構築されています。彼の作品は、プロパガンダのスタイルを取り入れながら、権力の美学と「ハウススタイル」を採用し、多層的な効果を生み出しています。彼はまた、システムの視覚的影響を探ることで知られており、植民地主義や共産主義、宗教といったテーマを深く掘り下げています。これらのテーマは、彼の独特な視点と技術によって、見る者に強烈な印象を与えます。
おすすめの写真集
Higher Ground
- 特徴：
『Higher Ground』は、マグナム・フォトのメンバーであるカール・デ・ケイゼル（Carl De Keyzer）が手掛けた新作写真集です。本作は、彼の前作『Moments Before the Flood』の続編にあたり、気候変動の影響をテーマにしています。『Moments Before the Flood』では、ヨーロッパが洪水によって沈む寸前の様子を描きましたが、『Higher Ground』では、洪水後の世界を描写しています。ケイゼルの写真は、アイロニーを含みながらも科学的予測に基づく未来の姿を映し出し、気候変動の深刻さを伝えます。 - 見どころ：
『Higher Ground』の見どころは、カール・デ・ケイゼルがオーストリア、スイス、ドイツ、フランス、スペインで撮影した印象的な風景写真です。これらの写真は、洪水を逃れた人々が高山に避難するというフィクションの世界を描いています。特に注目すべきは、フランスの著名作家フィリップ・クローデル（Philippe Claudel）による新作の物語が、英語、フランス語、オランダ語で収録されている点です。この物語と写真のコラボレーションが、気候変動の影響について深く考えさせられる一冊となっています。
Cuba la lucha
- 特徴：
『Cuba la lucha』は、マグナム・フォトの写真家カール・デ・ケイゼル（Carl De Keyzer）がキューバを訪れ、そこで撮影した驚きと哀愁が入り混じった写真を集めた一冊です。本書では、壁に飾られたフィデル・カストロのポスターと同じ写真に写る「FBI」のロゴが入ったTシャツを着た男性や、銀行でお金を引き出す4人のキューバ人とその上に掲げられたチェ・ゲバラの肖像など、キューバの二面性を捉えています。キューバがいまだに共産主義に根ざしつつも、西洋の資本主義に手を伸ばす姿を巧みに描いています。 - 見どころ：
『Cuba la lucha』の見どころは、カール・デ・ケイゼルがキューバの現実を鮮やかに捉えたトラジコメディな写真です。特に、壁のポスターや肖像画と現実の人々との対比が象徴的で、キューバの複雑な社会状況を深く理解させられます。キュレーターで広報担当のガブリエラ・サルガド（Gabriela Salgado）による序文も見逃せません。彼女の洞察が写真の背景を一層引き立て、読者にキューバの現実をより深く感じさせる一冊です。
Moments Before the Flood
- 特徴：
『Moments Before the Flood』は、マグナム・フォトの写真家カール・デ・ケイゼル（Carl De Keyzer）によるヨーロッパの未来を予見する写真集です。本作は、海面上昇に対してヨーロッパがどのように準備しているかを視覚的かつ写真で探求しています。カール・デ・ケイゼルは、各地を訪れ、洪水の脅威に対する人々の反応や風景を捉え、気候変動の影響をリアルに伝えることを目指しています。 - 見どころ：
『Moments Before the Flood』の見どころは、カール・デ・ケイゼルがヨーロッパ各地で撮影した迫力ある写真の数々です。特に、洪水防止のためのインフラや、自然災害に備える人々の姿が印象的です。また、写真の一枚一枚が語る物語が、気候変動の現実とその影響を強く訴えかけます。ケイザーの独自の視点が、読者に深い洞察を与える一冊となっています。
The First World War: Unseen Glass Plate Photographs of the Western Front (Emersion: Emergent Village resources for communities of faith)
- 特徴：
『The First World War: Unseen Glass Plate Photographs of the Western Front』は、第一次世界大戦の新たな視点を提供する貴重な写真集です。本書は、当時の粗雑なフィルムカメラでは捉えられなかった戦争の鮮明な瞬間を、希少なガラス乾板写真を通じて描き出しています。オリジナルのガラス乾板からスキャンされた写真は、傷や欠陥を専門的に修正され、かつてないほどの鮮明さと臨場感を持っています。これにより、読者は従来の粒子の荒いモノクロ写真とは一線を画す、鮮明でクリアな戦争の姿を目にすることができます。 - 見どころ：
『The First World War: Unseen Glass Plate Photographs of the Western Front』の見どころは、その多様で驚くべき写真の数々です。特に、訓練中の兵士たちや西部戦線のアフリカ植民地軍、壊滅的な風景、戦死したベルギー兵士の遺体写真など、従来見られなかった場面が収められています。また、初期のオートクローム法によるカラー写真も多く含まれており、戦争のリアリティを一層引き立てています。著名な作家ジェフ・ダイヤー（Geoff Dyer）の序文と歴史家デビッド・ヴァン・レイブルック（David Van Reybrouck）のエッセイも、写真の背景を深く理解する手助けとなり、読者に戦争の新たな視覚的体験を提供します。
写真界への贈り物：カール・デ・ケイゼルの影響と遺産
カール・デ・ケイゼルの影響は、彼の作品が持つ深い洞察と視覚的な力によって広がっています。彼は、他の写真家やキュレーター、デザイナーたちとも交流を持ち、写真界全体に大きな影響を与えています。彼の作品は、ヨーロッパやアメリカの数多くのギャラリーや博物館に収蔵されており、国際的な写真界における重要な位置を占めています。また、彼の教え子たちや同僚たちも、彼の影響を受けて独自の作品を生み出し続けています。ケイゼルの作品は、単なる記録写真を超えたアートとしての価値を持ち、見る者に新たな視点を提供し続けています。
