野町和嘉、高知から世界へ
高知県生まれの野町和嘉(のまち かずよし、1946 – )は、写真家杵島隆(きじま たかし、1920 – 2011)に師事した後、1971年からフリーランスとして活動を開始しました。サハラ砂漠への旅がきっかけで、世界各地の過酷な風土とそこで生きる人々の営みをテーマに取材を続けています。彼の作品は、地球の辺境で生きる人々の生活を深く掘り下げたものです。
国際的な評価を受ける写真家
野町和嘉は、サハラ、シナイ半島、ナイル、チベット、メッカ、エチオピアなどで長期にわたり取材を行い、その成果は数カ国で国際出版されています。米国報道写真家協会年度賞銀賞(雑誌部門)、講談社出版文化賞、土門拳賞など、多数の賞を受賞しています。
サハラ砂漠から学んだ撮影技術
野町和嘉の撮影技術は、自然の中で感じたままを捉えるという独自の哲学に基づいています。特にサハラ砂漠の取材では、1993年までに10回、延べ800日以上の時間を過ごし、その過酷な環境下での撮影技術を磨き上げました。ラクダと共に移動するキャラバンに同行し、空路で先史時代の壁画を訪ねるなど、彼の体験は単なる写真技術を超え、環境への適応と深い理解に基づいたものです。高温下でのフィルム管理など、困難な条件下でも最高の作品を生み出す彼の技術は、極限の環境における写真撮影の模範と言えるでしょう。
おすすめの写真集
A Photographer’s Pilgrimage: 30 Years Of Great Reportage
- 特徴:深遠なる旅の記録「A Photographer’s Pilgrimage: 30 Years Of Great Reportage (Discovery)」では、日本のフォトジャーナリスト野町和嘉氏が、信仰と人間の探究心をテーマに30年に渡る旅の軌跡を紹介しています。世界の辺境や貧しい地域を巡り、人々が自己、他者、そして神を求めてたどる「祈りの道」を追い求めています。イスラム教徒がメッカへ、仏教徒がラサへ、エチオピアのキリスト教徒がラリベラへと、彼らの旅は宗教を超えた人間の探求を映し出しています。
- 見どころ:信仰の多様性への洞察この写真集は、世界中のさまざまな信仰に基づく巡礼の姿を捉えています。野町和嘉氏の写真は、イスラム教、仏教、キリスト教などの信仰の中で、異なる文化と環境の中で繰り広げられる人々の精神性を深く掘り下げます。メッカのカーバ、ラサの仏教寺院、ラリベラの岩窟教会など、世界の聖地への巡礼を通じて、人類の普遍的な探究と信仰の力を見ることができます。
極限高地 チベット・アンデス・エチオピアに生きる
国際的な写真文化への貢献
野町和嘉の写真作品は、イタリアのローマ市立現代美術館で開催された「Le vie del Sacro」展など、国際的な展示会で高い評価を受けています。この展示会では約3万人の観客を動員し、彼の写真が持つ普遍性と深みが世界中の観客に認められました。さらに、野町氏は日経ナショナルジオグラフィック写真賞の審査員としても長年活動しており、次世代の写真家たちへの影響力も絶大です。彼の業績は、過酷な環境下での生活を捉え、その地域の文化や人々の精神性を世界に伝えることに尽力してきたことによります。その貢献は、写真界のみならず文化全般にわたっています。